「一服いかがですか」
差し出された茶碗を両手でそっと持ち上げると、じんわりとした温かさが掌に広がります。それは単なる熱さではなく、土や釉薬、そして何よりも作り手の想いが込められた優しい温もりです。茶碗はただお茶を飲むための器ではありません。その形、色、質感、そして描かれた景色は、静かな時間の中で私たちに豊かな物語を語りかけてくれます。
茶碗の魅力の一つは、その多様性にあります。萩焼、唐津焼、志野焼、織部焼… 日本各地の風土と歴史の中で育まれた様々な焼き物が、それぞれ独自の表情を持っています。土の素朴な温かみを感じさせるもの、繊細で滑らかな手触りのもの、大胆な筆致で景色を描いたもの、心和む愛らしい絵柄のもの。一つとして同じものはない、その一点との出会いこそが茶碗選びの醍醐味と言えるでしょう。
普段飲むお茶の種類、濃茶か薄茶かによっても、適した茶碗は異なります。一般的に、濃茶碗は茶筅が立てやすいように、どっしりとした形で内側が広くなっています。一方、薄茶碗は比較的浅く、口が広がった形が多いようです。もちろん、形に厳格な決まりはありませんので、ご自身の好みで選んでいただいて構いません。
「茶道具すえなが」で、掌に広がる温もりを通して、豊かなお茶の世界を体験してみませんか。きっと、あなただけの特別な茶碗との出会いが、日々の暮らしに彩りを与えてくれると信じております。